.incドメインが高い理由と、安く買う方法



.incはIncorporated向け(法人組織・企業という意味)のドメインです。Inc.が社名に入っている企業としてはアップル(Apple Inc.)やアマゾン(Amazon.com, Inc.)などがあります。

法人向けのドメイン、.incの値段を始めて見た時は脳みそに悪い意味での衝撃が走りましたね。あまりにも高すぎる価格は海外でも話題になっており、海外サイトだと「ドメイン界のブラックカード」などと呼ばれています。持っているだけで「金を持っている」と見せびらかすためのドメインだという皮肉ですね。

例えば国内最大手のお名前.comだと年間298,000円(税抜)、税込みだと1年327,800円、これが10年だと初年度が安くなったとしても305万円かかります。たった1つのドメイン維持費だけでこの値段ですよ!頭がオカシイですよね。
ちなみに後述しますが、これは年間23万程度までなら下げれます。(まだ高いですが)

.incが高い理由

.incが高い理由は、シンプルに原価代です。ドメインって実は受注生産の卸売みたいな感じで、メーカー→卸までの卸値がメーカーによって違うんですよ。これが「各ドメイン値段が違う」という状況を生んでいます。

ドメインというのは各ドメイン(.comや.net)を、民間の管理事業者(レジストリ)が管理しています。例えばお名前.comなどやムームードメインなどの登録事業者(レジストラ)を傘下に持っているGMOはレジストラではありますが、レジストリとしても.shopというドメインを管理しています。お名前とかバリュードメインとかGMO傘下の企業で.shopがプッシュされる理由はこういうことです。

そして.incを管理する権利を得た「Intercap Registry Inc」という企業が、.incの卸値にとんでもない価格をつけています。大体2000ドルくらいじゃないかなという話です。
これむちゃくちゃ高いですよ。.comとかだと10ドル以下ですからね。(正確に言うと2020年時点だと7.85ドルです)
なので、この仕入れ値が高いから.incというドメインは販売価格もどうしても高くなってしまうというロジックになっています。

.incを安くする方法

なお.incを卸値ギリギリの価格で取得する方法があります。一言で言えば、「海外の、原価に近い価格で販売しているレジストラで登録する」という方法です。
レジストラの利益は下記の式から割り出せますので、会社の利益を少なくして顧客に還元しているレジストラで登録すれば良いということです。

販売価格 – 卸値 = その会社の利益

さすがに卸値以下の価格で販売しているところはありませんが、海外のレジストラであればかなり卸値に近いところがあります。(初年度のみ激安で販売することはありますが、そういう業者は初年度以降にアホみたいに高くなったりするので注意してください)

そもそも.comなどのドメインだと1つ売って数百円という薄利多売という商売をしているのに、.incだと各社利益を乗せ過ぎなんですよね。数万〜数十万乗せてますからね。

ということで以下が、各社の.inc取得費用の比較です。(1ドル110円換算)

 更新費初年度料金2年料金5年料金10年料金
お名前.com327,800107,800435,4901,418,8903,057,890
ムームードメイン327,800107,800435,4901,418,8903,057,890
バリュードメイン327,800327,800655,6001,639,0003,278,000
ゴンベエ352,000352,000704,0001,760,0003,520,000
Namecheap$2,198
¥241,780
$2,098
¥230,780
$4,196
¥461,560
$10,490
¥1,153,900
$20,980
¥2,307,800
GoDaddy$4,000
¥440,000
$2,000
220,000
$6,000
660,000
$18000
¥1,980,000
$38,000
¥4,180,000
バリュードメインはドメインごとの料金紹介ページが無かったので、公式サイトのドメイン一覧からチェックしてみてください。

はい。アメリカのNamecheapという会社が一番安いです。
ちなみにnamecheapは僕も愛用しているレジストラで、安いし安定しているし管理画面は使いやすいしという最高の業者だと思っています。namecheap最強説!

ということで、.incはnamecheapで取得すれば一番安く維持できます。消費税も必要ありません。

お名前、ムームー、バリューといった国内の有名ドメイン登録業者は実は全部同じグループ(GMO)なんですが、初期費用で安く釣る以外は見事に足並みを揃えた価格になっています。
GMOグループだと年間維持費が327,800円、namecheapだと230,780円です(namecheapは初年度にまとめて数年分取れば、全て初年度料金が適用される)お名前とムームーは初年度の98000円で釣っていますが、税抜だし2年目移行が鬼のような価格になっているのでオススメできません。
税込みで考えると年10万円近い価格差ですので、namecheap以外で取る理由は正直無いと思います。

ちなみに国内のxドメインや、googleドメインでは.incの取り扱いはしていませんでした。
その他の海外業者を探してみましたが、年間2400ドル前後が多かったですね。

ちなみに海外つながりでGoDaddyも調べてみましたが、メインのレジストラにGoDaddyなんて使ったらいけません。あそこはデカいだけで、料金は高いし囲い込みはひどいしでオススメできません。取り柄はドメインオークションくらいでしょう。

.incに高い金を出す価値があるのか

う〜ん、これについては法人によるという感じでしょうね。
サイバースクワッティング(ドメイン占有屋)を警戒するのであれば取るべきだと思いますし、そうでないなら取らなくても良いと思います。「取られるのが怖いからとりあえず取っておく」って価格じゃないですし、多分上司の決裁必要な額ですので慎重に考えるのが良いと思います。

.incを取得することによって得られるサービス

一応.incは他のドメインと異なり、.incドメインオーナーだけのスペシャルなサービスを用意しています。

.incを取得すると、Intercap Registry社 が提供しているサービスを利用することができます。クレカの会員が無料で使えるサービス的なイメージですね。
Intercap Registry社いわく、「これらのボーナスで2500ドル分以上の価値があるぞ!」との事ですが、中身を見てみると正直微妙すぎますね・・・。
ざっと一覧を見た上で、「う〜ん、まぁ使うかも知れないな」と思ったベネフィットを挙げておきます。

  • Square 1000ドル分のトランザクションフィー(手数料無料)
  • Google Ads 150ドル分
  • Google Ads 100ドルクレジット(25ドル使用後にチャージ可能)
  • Indeed 100ドル分のリスティングチケット
  • デルタ航空 10000スカイボーナス(1回乗らないとだめ)

まあ微妙ですね笑
Google Adsのバウチャーなんて結構他でも配ってますし、ビジネス系でのドメインとしてプッシュしたいなら、セールスフォースやG Suitsの割引等のが効果的だと思うんですけどね。
ちなみにこのサイトでは、既に取得された.incの一覧も見れます。
ちらっと見た限りだと意外と日系企業も取得していますね。

  • datsun.inc (ダットサン)
  • nissan.inc (日産)
  • konicaminolta.inc (コニカミノルタ)
  • mufg.inc (三菱UFJ)
  • pola.inc (ポーラ)
  • mitsubishi.inc (三菱)
  • casio.inc (カシオ)
  • gree.inc (GREE)
  • mixi.inc (MIXI)
あと上記のリストには載せていないのですが、意外と日本の中小企業も取得しているのに驚きました。海外進出しているグローバル企業がサイバースクワッティングから身を守るのは当たり前の話なんですが、中小企業も普通に取得してるんですね。
ただドメインの所有権コントロールは本当に長期戦(数十年単位)になるので、維持費を年間10万円近く安くできるNamecheapで取得するのがオススメですよ。ちなみに隔年更新にすると100ドル高くなってしまいますので、できれば初年度にできるだけまとめて購入しておくのがおすすめです。

まあということで.incについての解説でした。
なお「namecheapで取りたいけど英語が心配」という方は以下の記事を参考にしてください。